日本医療研究開発機構(AMED)医薬品等規制調和・評価研究事業
「患者・消費者向けの医薬品情報等の提供のあり方に関する研究」
(2018年4月-2021年3月)
作成日 2019年4月1日|更新日2019年10月4日
医薬品など情報は、インターネット上や印刷物として溢れているが、センセーショナルで不適切な情報も多く一般市民に与える影響は少なくありません。場合によっては、患者は害を被るおそれがあり大きな社会問題となっています。近年では、多くのキュレーションサイトの欠陥が明らかになり、次々と非公開や閉鎖に追い込まれました。患者・消費者は、何が信頼のおける情報で、それをどこから得るとよいのかわからない状況です。米国でも、一見公正中立な情報提供を装いながら、実は特定の療法を提供する医療機関などへ誘導していたというサイトなどが社会問題となっていました。それが契機となって、NIH(National Institute of Health) がMedlinePlusという統合的な医療情報提供サイトを一般消費者向けに開始された経緯があります。
国内では、断片的には信頼のおける情報は存在しますが、公的な医薬品などの統合的な医療情報提供環境はまだ整っていない状況です。特に、医療情報に関しては、信頼できる情報かどうかを担保する仕組みが十分でないことが考えられます。平成26年版厚生労働白書によると、インターネットは今や国民の4分の3が利用する重要な情報源であり、インターネットによる国民に向けた信頼性のおける医療情報の整備は喫緊の課題といえます。
国内には、一般消費者・患者に向けた信頼のおける医薬品など情報の包括的なインターネットのサイトは存在しないため、患者・消費者の拠り所となる、医薬品など情報の包括サイトの構築を提言する、新たな研究が必要と考えます。
ユーザー・フレンドリーかつ信頼性の高い医薬品など情報の包括サイトを構築し、適正な情報提供が進むことにより、患者・消費者は、医薬品などの有効性および安全性について理解し、適正な使用につながることを目的とします。また、医療者とのリスク・ベネフィットコミュニケーションツールとして、医療者と情報を共有し治療の選択にともに関わることを可能にすることを目指します。
これまでの研究実績や得られた情報を積極的に活用して、患者・消費者の医薬品など情報に関する認識、利活用の状況の調査や真のニーズに関する調査を行い、実態を把握し、また、国内における医薬品など情報提供やその評価の現状を調査し、医療情報サイトに関する質などの評価基準となる指針を設定します。それに準じて、医薬品など情報の入手できる各種情報サイトの有用性の検証などを並行して実施しつつ、実際に医薬品など情報のパイロットサイトを構築・運用する。それらの調査・検討を踏まえ、一般向けのインターネットでの医薬品など情報提供のあり方や情報提供システムのあり方を提言します。
一般向けの医薬品など情報提供の体制に向け、当研究班では、エビデンスに基づくサイト構築の研究計画を立てました(図1)。
(図1)一般向けの医薬品など情報提供の体制:グランドデザイン案
欧米では、公的な機関などによる患者向けに信頼性の高い医薬品などの医療情報提供システムが整備され、利活用が進んでいる国も多い。今回は医薬品などを中心にした情報提供のサイトであるが、将来的には、公的な機関による医療情報全般に関する基盤システムの構築や整備が望まれます。そのようなシステムの普及により、患者・消費者において根拠に基づいた薬物治療や医薬品に関する情報の正しい利活用が進み、社会における医薬品への信頼性が向上し、安全で満足度の高い医療の実現が期待されます。
また「患者と医療者が根拠に基づく情報を共有して一緒に治療方針を決定するシェアード・ディシジョン・メイキング」や患者が納得できる医療を推し進める上でも情報提供基盤は有用です。このような取り組みにより、患者の知識や認識の向上、健康状態の改善、ケアとコストの削減など、患者、医療者およびヘルスケアシステムに多大な利益をもたらすことが期待されます。
当研究班は、国内の医薬品情報に関連する関係者(患者団体、医療者、製薬企業、アカデミア、行政など)により構成されています。(図2)
研究開発代表者 山本 美智子 熊本大学大学院生命科学研究部
研究開発分担者
研究協力者
(図2)患者団体、医療者、製薬企業、アカデミア、行政などによる協力体制
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 医薬品等規制調和・評価研究事業
研究開発課題名「患者・消費者向けの医薬品情報等の提供のあり方に関する研究」
(更新日 2022年4月11日)